
- STEP 02事業計画
- [検討時期の目安:開業12ヵ月〜6ヵ月前]
歯科医院の物件・テナント候補地の探し方、決め方
歯科医院の事業計画を立てたら、次はコンセプトや予算感に合う実際の物件・テナントを探しましょう。
物件の選定は開業後の集患(集客)に大きく影響します。
競合となる歯科医院や、立地における人口の情報などを加味しながら、医院経営が継続的に成り立つかの視点を持つことが大切です。
目次
理想の歯科医院をつくるための立地・物件の選び方
歯科医院の立地や物件を選ぶ際は、患者さんの通いやすさやアクセスの良さをはじめ、次のような点も考慮しましょう。
- 地域の特性(年齢別人口、世帯別収入など)
- 視認性(人目につきやすいか)
- コスト(賃料や維持費などが予算内か)
- 競合歯科医院の状況(院長の年齢やコンセプトなど)
- 地域の将来性(これから発展が期待できるエリアか)
これらをふまえて、ご自身の目指す歯科医院のコンセプトに合う物件を選ぶと良いでしょう。
こだわりたいポイントや条件を整理しよう
理想の歯科医院を開業するためには、なにを物件に求めるのかを具体的に考える必要があります。物件情報を収集するにあたり、こだわりたいポイントや条件を整理して優先順位をつけておきましょう。
物件で見ておきたいポイント
- 賃料
- 坪数
- 階数
- エレベーター
- 形状
- 時期
- 契約年数
- 保証金
- 上下階のテナント
- 近隣のテナント
- 新築物件
- 築年数
- 設備
- 看板の設置位置
- 広告を出す位置
- 窓の位置
- 駐車場
- 以前の入居者
- 工事業者指定
- オーナー仲介業者
立地で見ておきたいポイント
- 方位/方角
- 周辺の開発状況
- 学校が近い
- 商店街
- 駅からの距離
- 人通り
- スーパーが近い
- 集客施設が近い
- 今の勤務地からの距離
- 〇〇駅周辺
- 〇〇線沿線
- 自宅から近い
- よく知っている街
- 気に入っている街
- 近隣住民の所得層
- 近隣住民の人口
- 近隣住民の年齢層
- 近隣住民の家族構成
- 近隣の歯科医院
戸建て開業とテナント開業の比較
戸建て開業とテナント開業では、コストや経営リスク、長期的な資産価値などの面においてそれぞれ特徴があります。歯科医師としてのライフプランや経営方針に合わせて比較し、選択しましょう。
戸建て開業 | テナント開業 | |
---|---|---|
コスト | 土地と建物の費用がかかるため、開業資金が高額になりやすい。 ただし、購入した土地は資産になる。 |
開業資金が少なくてすむので借り入れが少なく、リスクが小さい。 |
準備期間 | 土地を決めてから開業までの目安は12~14カ月程度。 | 物件を決めてから、保険診療開始までの目安は6カ月程度。(4月1日に保険診療開始するには少なくとも10月ごろには物件を決めておくことが必要) |
物件情報 | 簡単には見つかりにくい。 | 物件が圧倒的に多く、不動産屋などですぐに探すことができる。 |
制約 | 建物の広さやデザインの自由度が高い。 |
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その他 | 住居併用ではプライバシーを詮索される場合がある。 (休診日に患者さんが来訪したり、自家用車の車種などによって生活水準を推測され、地域住民から妬みを受けるケースがある) |
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テナント開業について
物件決定は保険診療の6カ月前が目安
物件決定から保険診療開始までの期間はおよそ6カ月です。具体的なスケジュールを設定し、物件探しのリミットを算出しましょう。日程を決めておくことで物件確保後に必要となる準備がスムーズに進み、資金計画も立てやすくなります。

契約上の条件についてはしっかり確認を
テナント物件の契約には、基本的に更新ができない「定期借家契約」などもあります。提示された条件を十分に確認することが重要です。契約後のトラブルや予想外の費用発生を防ぐため、不動産業者や歯科開業に携わる業者などに相談すると安心です。
居抜き物件を選ぶ場合
戸建て開業、テナント開業いずれにおいても、居抜き物件という選択肢があります。居抜き物件は初期費用が抑えられ、設備が最低限整っているというメリットがありますが、物件の状態や契約内容、地域の評判などを総合的に確認する必要があります。設備や内装、費用の面でトラブルが発生しないよう慎重に調査しましょう。
物件情報の集め方
インターネット検索
もっとも手軽に、広範囲に情報収集することができ、賃料などの相場も把握できます。一方で、更新のタイムラグがあるため、すでに成約済みの物件情報が掲載されていることや、物件によっては情報の一部が公開されていないこともあります。
不動産業者、仲介業者
希望エリアの不動産業者や仲介業者に直接物件情報を提供してもらう方法です。地元の業者は地域特有の事情や最新の物件情報に精通しており、希望の条件に合わせて物件を提案してくれます。契約書のチェックや賃貸条件の交渉も行ってくれるので、トラブルを防ぎやすいのもメリットです。歯科医院に適した物件かどうかの見極めを行ってくれるアドバイザーがついてくれるとより安心です。
歯科関連の取引企業
歯科医療機器メーカーや代理店、コンサルタントなど、取引のある企業の担当者から物件情報を提供してもらうことができます。それぞれ歯科医院の開設、運営についての知識とノウハウを持っているため、アドバイスをもらいながら検討することができます。
たくさんの物件情報のチェックには時間と手間がかかります。物件探しをより効率的に行うため、外部のサポートを活用することも検討しましょう。
候補地が決まったら診療圏をチェックしよう
ある程度、開業候補物件が定まったら、1日にどの程度の来院患者数が見込まれるか、その場所のポテンシャルを把握する必要があります。
また、診療圏調査を実施するだけでなく、現地に行ってみることも大事です。良いと思う物件が見つかったら、現地に足を運び、その地域の雰囲気や生活者、物件の視認性、道路状況などの確認をしましょう。朝・昼・晩、平日・休日の状況を実際に見て確かめましょう。
診療圏調査とは
地域での開業適性をさまざまな数値から分析するための調査です。地域の人口や競合施設などの把握ができ、来院患者数の推測に役立ちます。
下部に記載の診療圏調査ツール「Doctor’s Compass」など、歯科メーカーなどが提供しているサービスを利用するのが一般的です。
認知されやすい立地か
地域住民が普段通る道や、よく訪れる場所が近くにあるか、またターゲット層に合わせた地域特性であるかを考慮しましょう。踏切や川、中央分離帯、横断歩道のない大きな道路などは通行動線を分断し、診療圏が狭くなるため注意しましょう。
例
- 駅前やバス停の近く
- 住宅街やファミリー層が多いエリア
- 商業施設やスーパーの近く
- オフィス街やビジネスエリア
- 学校や子ども向け施設の近く
- 駐車場が利用できる立地
- 地域の目につきやすい交差点や主要道路沿い など

近隣住民の人口・環境から集患(集客)が見込めるか
診療圏調査にもとづき、充分な推計患者数が確保できるか確認しましょう。テナントの場合は他の入居テナントの様子、医療ビル・モールの場合は他診療科目の入居状況なども確認しましょう。その他、近隣の商店や周辺駅の乗降数、駅前などの再開発の有無などもチェックしておきましょう。

競合医院
近隣の競合医院の情報は、地域のニーズに合ったターゲット設定や集患(集客)戦略を立てるのに役立ちます。競合医院について把握したうえで、自院ならではの強みを打ち出し、差別化を検討しましょう。
競合医院のチェックポイント
- コンセプト
- 外観や看板の印象
- 階数
- 開設年度
- 院長の年齢
- ホームページやSNSの充実度
- 勤務医の人数
- 予約状況
- 個人診療所か法人の診療所か
- 20時以降や日曜診療の有無
- 近隣での評判 など

診療圏調査ツール「Docter’s Compass」を活用しながら物件候補地のチェックをしていきましょう。
物件探しにはさまざまな確認・検討事項がありますが、土地やテナントとの出会いは一期一会です。ご自身が決めた優先順位に沿って選びましょう。