
- STEP 02事業計画
- [検討時期の目安:開業12ヵ月〜6ヵ月前]
歯科医院開業の設計デザイン・内装のポイント
歯科医院の設計デザインや内装は、患者さんの満足度やスタッフの働きやすさに直結するだけではなく、医院のコンセプトを具体化し、他院と差別化を図るための重要な要素です。今回は設計デザイン・内装のポイントや留意点について、フロアごとに解説します。
目次
まずは導入する機器を検討
歯科医院の設計デザインは、必要なフロアや導入機器がレイアウトに収まるかを検討し、ターゲットとなる患者層も考慮しながら進めていきます。
まずは、医院のコンセプトや運営方針に沿って、必要な機器が何かを整理しましょう。
主な機器
- 歯科用ユニット
- CT、セファロ、デンタルレントゲン
- マイクロスコープ
- IOS
- レーザー
- オートクレーブ
- ジェットウォッシャー
- 小機械関連
- 機械室
- レセコン
- 自動釣銭機
- その他院内PC など
歯科医院の設計デザインで大切なのは動線を考慮したゾーニング
導入する機器を決めたら、設計士と相談しながら、設計デザインや内装の具体的な計画を進めます。歯科医院のフロアは主に「患者ゾーン」「患者さんとスタッフの共用ゾーン」「スタッフゾーン」の3つに分かれます。スタッフの動線をはじめ、各機器のサイズや操作性、動作範囲、使用頻度などを考慮してゾーニングを行うことが重要です。治療や業務を効率的に行えるよう工夫をしながら、患者さんが快適に過ごせる空間を検討しましょう。
歯科医院設計は専門性が高く、機器の知識や作業効率、最新歯科設計のトレンドなど幅広い知識が必要となります。内装設計を依頼する際は、歯科医院設計専門や多くの設計実績のある設計士(設計事務所)に依頼することをおすすめします。
歯科医院の各フロア 設計デザインの留意点
待合室
待合室は単なる「待つ場所」ではなく、医院の印象を決める重要な空間です。患者さんが最初に足を踏み入れた際に居心地の良さや清潔感を感じられると、安心感や信頼感につながります。待合室の印象を決める一つに「広さ」があります。歯科医院ではスペースが限られることが多いため、「広さ」は慎重に検討する必要があります。
広さを考える際は、診療室の規模(ユニット台数)に基づいて、来院する患者さんの人数や待ち時間を考えて設定します。待合室の椅子の数は、「予約の多い時間帯の来院者」の最大数を推定して確保するのが一般的です。想定する患者層によっては1人掛けか、3人掛け(ソファ)にするかを検討しましょう。空気清浄機などの機器を設置する場合には、想定したスペースを確保する必要があります。
医院のコンセプトに「患者さんを待たせない」などを掲げ、来院した患者さんをすぐに案内できる体制を整えるのであれば、待合室はコンパクトでも問題ないでしょう。集患のターゲットが子どもや高齢者の場合には、来院時に付き添いの家族がいることを想定し、待合スペースを広めに設けるなどの工夫が必要です。キッズスペースの設置も検討しましょう。
待合室の事例


入り口
院内を土足にするか、スリッパを使用するか、検討しましょう。それぞれメリット、デメリットがありますが、最近は土足のまま受診できるスタイルを選択する医院が多くなってきています。
土足 | スリッパ | |
---|---|---|
メリット |
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デメリット |
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物販コーナー
口腔ケア用品(歯ブラシ、フロス、歯磨き粉など)の販売は、医院収入の増加に効果的です。中には、ひと月に人件費1名分ほどの売上を上げる医院もあります。販売商品をアピールするコーナーを設け、来院者の関心を引きましょう。
受付
想定する患者数に応じた受付スタッフの人数や、導入する機器に合わせて、必要な広さを検討します。最近では受付スタッフを配置しない歯科医院も見られます。
受付の主な機器
- 自動精算機
- レセコン用パソコン
- 予約用パソコン
- マイナ用顔認証付きカードリーダー
- クレジットカード決済端末
- プリンター(複合機)
- レジスター など
受付の事例


診療室
診療室は動線設計に大きく関わるエリアの一つです。患者さんとスタッフとの動線を分ける設計(動線分離)と、患者さんとスタッフが共通の通路やフロアを共有して移動する設計(動線混合)があります。医院の規模や運用方針に応じて適切な設計を選択しましょう。
診療室には個室、セミオープン、オープンといったタイプがあります。医院コンセプトや用途に適したスタイルに合わせて設定します。たとえば、オペ室は清潔性の維持が重要なので、衛生管理や効率性の観点から個室にすることが多いです。また、カウンセリングルームはプライバシー遵守の観点から、個室もしくはセミオープンで設計されることが多いです。診療室は医師やスタッフが長時間過ごす空間です。動線の無駄をできるだけ減らし、効率的に作業できるレイアウトを心がけることが重要です。
診療室の事例


トイレ・洗口コーナー
トイレは患者さん用とスタッフ用を設置することをおすすめします。患者さん用のトイレは男性用・女性用に分けたり、ベビーシートを設置したり、患者さんのニーズに応じた環境づくりを心がけましょう。洗口コーナーには、上半身や口の中を確認できるサイズの鏡を設置するのが良いでしょう。また、物販POPなどを設置することで、院内で販売する商品をアピールする場所としても活用できます。
トイレ・洗口コーナーの事例

レントゲン室
導入するエックス線装置によって必要となるスペースが変わります。セファロを設置する場合は、機器の設置寸法に合わせて部屋の広さを計画しましょう。エックス線管理区域になるため、エックス線が漏洩しないよう、床、壁、天井、扉にエックス線を遮蔽する鉛板や建材を使用した設計が必要です。エックス線撮影時に患者さんの様子を確認できる鉛入りガラスも設けましょう。また、レントゲン室の横には、曝射スイッチや装置を作動させるためのパソコンやモニター、デンタルレントゲンスキャナーなどの設置も必要です。
カウンセリングルーム
患者さんに治療計画や自費診療、選択肢がある治療のメリットとデメリットなどについて、説明を行う場所です。患者さんが不安や疑問を解消できるよう、プライバシーを確保し、気兼ねなく相談できる空間を用意しましょう。2名が利用できるスペースとイス、テーブル、パソコンがあれば、必要最低限の環境が整います。
カウンセリングルームの事例

消毒コーナー・技工コーナー
消毒コーナー
安全性と効率を重視しながら、将来的に導入する機器を考慮した計画が必要です。特に、自動洗浄機やオートクレーブの種類や台数によって、必要な電気容量や配管設備が異なるため、将来的な計画をふまえてレイアウトを検討しましょう。
技工コーナー
従来のアナログ技工に加え、デジタル技工の普及により、IOS機器やスキャナー、ミリングマシンなどのデジタル機器の導入が進んでいます。その設置スペースや作業エリアの要否を含め、検討することが大切です。開業時の導入機器や将来的な計画をふまえて、コーナーの広さを設定しましょう。
収納
歯科材料・消耗品、移動式の医療機器などの収納は、使用頻度や種類、用途に応じて設けます。整頓された状態を保てるように収納方法を検討しましょう。ラベリングや収納状況の写真を掲示するなど、必要なものをすぐ取り出せるように工夫することで、スタッフの負担が減り、業務の効率化につながります。
院長室・スタッフルーム
院長室やスタッフルームは1日の中で使用する時間が少ない場所です。院長室は最低限のスペースにとどめるのが良いでしょう。スタッフルームについては、将来診療室を拡張する可能性も視野に入れて、少なくともチェア1台のユニットと収納を追加できる広さや設備を確保しておくのがおすすめです。
機械室
ユニットの台数や口腔外バキュームなどの導入に応じて、必要なスペースや電気設備などが異なります。機械室の機器は大きな熱が発生するため、吸排気を効率的に行う方法が必要です。
その他
最近では、多目的に活用できる空間を確保する歯科医院も増えています。例えば、患者さんや地域住民の方々向けの院内セミナーや親子向けワークショップ、スタッフ向けには院内研修のためのスペースとして利用するケースがあります。
設計デザイン・内装の流れ
テナントの場合


POINT
歯科医院の設計では設備配管や電気配線に必要なスペースを床下に確保するため、床上げすることが前提になります。現場調査では、電気や配管などの設備と合わせて、天井高が適しているか確認しましょう。
戸建の場合


POINT
開業候補地が決まったら、建築基準法や地域条例の制約(用途地域、建ぺい率、容積率など)を確認し、農地転用の手続きが必要かなどを確認しましょう。
歯科医院の設計デザイン・内装は、必要な設備や動線、さらに将来を見据えて計画をすることが重要です。自院のコンセプトを反映しつつ、患者さんやスタッフが快適に過ごせる空間の実現を目指しましょう。